皆さんは『ケルト』と聞くと何を想像しますか? 特徴的な音楽や編み込んだような独特の模様、そして妖精たちが飛び回るファンタジーの世界……。
不思議に懐かしく、そして心が癒されるケルトの文化の数々。
ケルトの世界の簡単な歴史と、その魅力をご紹介しましょう。
『ケルト』って?
ケルトとは、古代ヨーロッパに住んでいたケルト語を話す人々や、その文化のことを指します。
文字を持たない文化のため、いまだ謎に包まれた部分も多く、現在も解明が続けられています。
ケルト語を話すケルト人は、ひとつの民族ではありません。彼らはヨーロッパに広く散在していた先住民族で、共通した習慣や文化を持っていながら、ひとつの国に落ち着くことはありませんでした。
移動を長期間続け、また戦いの間にほかの民族と混ざり合うことで、ケルトの文化はヨーロッパのルーツとなったのです。
ケルトは「大陸のケルト」「島のケルト」の2つに大別されます。
ヨーロッパ各地にその勢力を広げていったケルト人を「大陸のケルト」と呼ぶ一方で、紀元前500年頃にブリトン語を話すケルト民族たちがスペインからブリテン諸島に渡り、またスペイン系のケルト人たちは、紀元前600年頃にアイルランドの島に渡っています。
このようにスコットランド、ウェールズ、マン島、アイルランドに移り、定住していったケルト民族を「島のケルト」と呼ぶようになりました。
特にアイルランドは、12世紀終わり頃まで外からの影響があまりなく、ケルトの特色がよく保存されています。
島のケルトの文化や音楽を、現在私たちは主にケルト文化として認識していることになりますね。
ケルトのシンボル『ケルト十字』
もっとも有名なケルトのシンボル、それはケルト十字です。
ケルティッククロス、アイリッシュクロス、アイルランド十字などとも呼ばれます。
十字架に円を重ねたもので、特に十字架部分にケルト独特の編み目模様が刻まれているのが一般的です。
元々ケルトの宗教はドルイド教と呼ばれるものでしたが、5世紀にキリスト教が伝わり融合し、独自の広がりを持つようになりました。
ケルト系キリスト教の象徴となっているケルト十字ですが、単にキリスト教の宗教的シンボルというだけではなく、大きな愛や啓示、加護をもたらすものとして愛されています。
代表的なケルトデザイン
そのほかの、代表的なケルトの模様をいくつかご紹介します。
ケルティック・ノット
ケルトでは、肉体は滅びても魂は不滅と考えられ、輪廻転生の意識がありました。
渦巻きや絡み合った網目模様(ケルティック・ノット)が多く、始まりも終わりもない循環する模様も多数あります。
すべてのものに精霊が存在し、自然そのものが神であるという考え方を持つケルト。日本人の意識と通じるものがありますね。
ケルティック・ノットは自分で書くこともできるので、ぜひチャレンジしてみてください。
トリケトラ(トリニティー・ノット)
トリケトラとは、3つのコーナーという意味の言葉です。
古くから存在する、三位一体を表す図柄です。
3という数字は自然界に働く力を表現します。たとえば生と死と再生、肉体と精神と霊。
また『作用(能動)』『抵抗(受動)』『平衡(中和)』という3つの力の考え方は、ドルイド僧たちの重要な知識の礎となりました。
サークル(円)や、そのほか複雑な模様が編み込まれても、角が3つあるものはすべてトリケトラとして分類されます。