グランプリファイナルで見事に金メダルに輝いた羽生結弦選手。
彼が2014-2015シーズンにショートプログラムで演じた曲が、ショパン「バラード」第1番ト短調作品23です。
ショパンはフィギュアではよく使われる作曲家ではありますが、羽生選手の活躍も相まって、浅田真央選手のノクターンに続き、バラード第1番はSP屈指の名曲となりました。
美しい曲にまつわるエピソードや名演奏など、いろいろご紹介したいと思います。
バラードの由来
フレデリック・ショパンが「バラード」を作曲する以前は、バラードというのは詩そのものや物語を含む音楽を意味していました。
つまり、器楽(ピアノ)曲としてのバラードを初めて生み出したのはショパンだということになります。
古い歴史物語を詠んだ詩に基づいて作曲されたという説もあり、確かにバラードはどこかストーリーを感じさせ、何かを語りかけてくれます。
フィギュアスケートには音楽に合わせた振付や表現も重視されますから、この曲に含まれる物語を、羽生選手は雄弁に表現して高評価を得ているのでしょう。
バラードの曲調と時代背景
ショパンはバラードを4曲作っていますが、その中でも第1番はもっとも有名です。
祖国ポーランドを離れてパリに滞在している1831年から1835年にかけて作曲された、初期の代表作です。
当時のショパンは21歳から25歳。パリ時代のショパンは、シューマンを始め様々な音楽家や批評家に高く評価され、多くの演奏家とも交流を持ちました。
サロンで引っ張りだこになり、ノクターンやマズルカなど次々と作品も出版され、華やかな時代だったと言えるでしょう。
第1番は、冒頭の印象的な低音から始まります。
序奏のあとに物憂げな主題になり、まるで悲しみに揺れる心を表現するようなメロディが続きます。
しかしやがて強烈なアルペジオが現れ、長調の甘い響きのメロディに変わり、爆発と収縮を繰り返して、最後に鮮烈なコーダで幕を引きます。
本当にドラマティックな展開に息を呑むような曲なのです。
演奏時間は約7分~10分程度。高い演奏技術と豊かな表現力を求められる難曲です。
こんなところでも使われているバラード第1番
フィギュアスケートで「バラード」第1番をを使っているのは羽生選手だけではありません。
浅田真央選手も、2010-2011シーズンのエキシビションにこの曲を使用し、芸術的な演技を披露しています。
また映画「戦場のピアニスト」の中で、将校の前で主人公のピアニストが弾く曲としても知られていますね。
ショパン「バラード」のぜひ聴きたい名盤
ショパンのピアノ曲は多くのピアニストが録音しています。
もちろんバラード1番はその中の定番で、数えきれないほどの演奏を楽しむことができます。
クリスティアン・ツィマーマンは、本当に完璧なバラード1番を聴かせてくれます。
彼は後に指揮者として、ショパンのピアノ協奏曲を弾き振り(指揮をしながらピアノの演奏も行うこと)し、それまでのショパンの協奏曲のイメージを一新した解釈で評判になりました。
またウラディーミル・アシュケナージのバラード1番は、繊細でロマンティック。
ショパンの叙情性を味わいたい方にお薦めです。
同じく羽生選手のFS曲オペラ座の怪人についてはこちら、
多くの選手がSP・FS曲として取り上げる「カルメン」についてはこちらでどうぞ