クリスマスパーティーでくるみ割り人形をプレゼントされたクララ。
無骨で不格好な人形に、クララは深く心を惹かれます。
そしてみんなが寝静まった深夜、胸躍る夢物語は幕を開きます――。
バレエや映画で有名な『くるみ割り人形』の魅力を、いろいろな視点から紐解いてみましょう。
『くるみ割り人形』って?
原作は、T・E・ホフマンの『くるみ割り人形とねずみの王様』という童話。
それに基づいてチャイコフスキーが作曲し、完成したバレエが『くるみ割り人形』です。
「花のワルツ」「金平糖の踊り」などはCMに起用されることも多く、クラシックに興味のない人でもメロディを聞けばわかるものが多いはず。
バレエとして上演されるだけでなく、クラシックコンサートの定番曲でもありますし、バレエを元にした実写映画や人形劇の映画も多く製作されています。
最近では松坂桃李さん、有村架純さんの主演によるサンリオの人形アニメ映画が公開されて話題になりましたね。
サンリオ映画「くるみ割り人形」公式サイト→ kurumiwari-movie.com/
また、東京タワーが映画とタイアップでくるみ割り人形のライトアップされるという企画もあるようです。
『くるみ割り人形』はどんなお話?
舞台はイブの夜、少女クララの家では大広間にたくさんの来客が訪れ、クリスマスパーティーがにぎやかに行われています。
ドロッセルマイヤー老人が鮮やかな手品を見せたり、人形にダンスを踊らせたりしています。
クララはドロッセルマイヤーから、兵隊の格好をしたくるみ割り人形をプレゼントされました。
クララは一目で人形が気に入ります。
しかし人形は、横取りしようとした兄のフリッツによって壊されてしまいます。
クララはひどく悲しみましたが、ドロッセルマイヤーが修理し、人形は大広間に寝かされます。
皆が寝静まった深夜。
クララは傷ついたくるみ割り人形が気になって、こっそりとその様子を見に来ます。
時計が12時を打つと、クララはみるみるうちに小さくなり、人形と同じくらいの大きさになってしまいます。
そこへ現れたのはねずみたちの軍団。
ねずみの王様を中心に、人形たちに襲いかかります。
くるみ割り人形もまた部隊を率いて戦いますが、ねずみ軍の方が優勢。
くるみ割り人形にとどめを刺そうとするねずみの王様を、クララがスリッパで攻撃!
ねずみ軍は退散します。
倒れ伏していたくるみ割り人形が起き上がった時、彼は人形ではなく凜々しい王子様の姿へと変わっていました。
王子はクララに感謝し、ふたりはお菓子の世界へと旅立ちます。
楽しいお菓子の世界の魅力
お菓子の国には魔法のお城があり、女王がクララを歓迎してくれます。
バレエでは女王とお菓子の国の住人たち=お菓子の精たちが、たくさんの踊りを見せてくれる、華やかなシーンです。
この女王、フランスやロシアでは『ドラジェ』という砂糖菓子の精だといわれています。
ドラジェは、今では結婚式でよく配られるお菓子として有名ですね。
ドラジェがまだ知られていなかった当時の日本では金平糖の精と訳され、また英語圏では「sugar plum fairy」と呼ばれています。
シュガープラムというのはこれもお砂糖のかかったお菓子で、クリスマスの時よく食べられるようです。
そのほかにもたくさんのお菓子と飲み物が登場します。
チョコレートはスペインの踊り、コーヒーはアラビアの踊り、お茶は中国の踊りとして知られています。
お菓子の国での踊りはまだまだありますが、『トレパック』『葦笛の踊り』『ジゴーニュおばさんと道化』『花のワルツ』など、特にどんなお菓子か表記がないものも多く、どのお菓子に当てはまるのかは諸説ふんぷんといったところ。
有名な『花のワルツ』は女王の侍女たちが踊るのですが、粉砂糖の精という説があるようです。
砂糖菓子の女王の侍女は粉砂糖だと言われると、なるほど納得しますね。
本物のくるみ割り人形ってどういうもの?
くるみ割り人形は、ドイツの伝統的工芸品です。
特にゾンネンベルク、ザイフェン村など、山間地域の特産品として有名です。
ザイフェンの木のおもちゃ→ http://www.seiffen.jp/
木で作られた直立した人形で、上下の歯の間にくるみを噛ませて、背中のレバーを押して殻を割る仕組みになっています。
ドイツではくるみはクリスマスの必需品で、よってくるみ割り人形もクリスマスの装飾品となったようです。
16世紀にはすでに存在し、当時はくるみ割りでなく「くるみ噛み」と呼ばれていたとのこと。
日本ではクリスマス装飾としては定番ではありませんが、くるみ割り人形を部屋に飾ってみることで、また違ったクリスマス気分が味わえそうですね。
バレエや映画を鑑賞した人なら、そのロマンティックな思い出に浸ることもできるのではないでしょうか。