満ちては欠ける月。その月齢ごと、形ごとにいろいろな呼び名があります。
新月、満月、三日月は有名ですが、そのほかの時にもそれに応じた、なかなかロマンティックな名前が存在しています。
また日本だけでなく英語での呼び方や、月にちなんだ行事などもご紹介していきたいと思います。
月齢と月の名前
『朔望月』(さくぼうげつ)という言葉があります。これは、月の満ち欠けの一周期を表します。
朔(現代の意味での新月)から次の朔、また望(満月)から次の望までの期間という意味です。
平均朔望月は、だいたい29.5日前後ということになります。
この間に、月はいろいろな顔を見せます。公転する月が太陽の光を受けて見せる、日ごとに違う表情を追って行ってみましょう。
月齢0:新月(朔)
まったく月が見えない時を朔といい、英語ではnew moon、またこの英語の翻訳から新月と呼ばれます。
朔は一日(ついたち)の意味も持ちます。
新月とは元々、朔の後に初めて見える月のことを意味しましたが、現代ではまったく月が見えないことを指すようになっています。
月齢1:二日月(ふつかづき)
文字通り、二日目の月です。繊月(せんげつ)とも呼ばれます。
月齢2:三日月(みかづき)
三日目に出る月。鎌や弓、剣などに見立てられることもあります。また人の眉に例えられることも多く、眉月、蛾眉(がび)などとも呼ばれます。
英語ではcrescent moon。cre-はラテン語で「成長する」という意味を持ち、月がこれから成長して満ちていくことを示しています。
月齢6:上弦の月(じょうげんのつき)
新月から満月に至る途中、月が満ちていく時の半月です。弓張り月とも呼ばれます。英語ではhalf moon。
月齢9:十日夜(とおかんや)
これは毎月というわけではなく、陰暦10月10日(新暦11月10日)に行われる収穫祭を意味します。
稲刈りが終わり、田の神が山へ帰る日であり、今年の収穫に感謝し来年の豊作を祈って行われるものです。
月齢12:十三夜(じゅうさんや)
毎月この頃の月を十三夜と呼びますが、特に陰暦9月13日の月見の時は後の月、月の名残と呼ばれます。
十三夜の月見に栗や豆を供えることから、栗名月、豆名月とも言われます。
まさに満ちようとする月で、縁起が良いとされています。
英語ではgibbous moon。gibbousとは、半円よりふくらんだ、凸型の、という意味です。
月齢13:小望月(こもちづき)・十四日月(じゅうよっかづき)
満月前夜のため、待宵の月(まつよいのつき)とも呼ばれます。
月齢14:満月(まんげつ)
英語のfull moonから満月、また望や望月(もちづき・ぼうげつ)、盈月(えいげつ)、十五夜(じゅうごや)とも呼ばれます。
月がもっとも真円に近い形となる日で、特に陰暦八月十五夜は中秋の名月と言われ、昔から月見が楽しまれてきました。
月齢15:十六夜(いざよい)
満月の翌日、月の出も前日より少し遅くなった月。
それを見た昔の日本人は、月が「ためらう」「躊躇する」のだと見なし、その意味を持つ「いざよう」を名詞化して、陰暦16日の月を「いざよい」と名付けたようです。風情がありますね。
月齢16:立待月(たちまちづき)
陰暦17日目の月。夕方、月が出るのをいまかと立って待つうちに出る月です。
「たちまち」という単語の語源にもなっています。現代で考える「たちまち」はかなりのスピードですが、当時は今よりもゆっくりしていたということでしょうね。
月齢17:居待月(いまちづき)
陰暦18日目の月。座って待っているうちに昇ってくる月を意味します。
月齢18:寝待月(ねまちづき)
月の出が遅くなってきたので、寝て待つためこう名付けられました。別名、臥待月(ふしまちづき)。
月齢19:更待月(ふけまちづき)
陰暦20日夜の月のため、二十日月とも呼ばれます。
この頃になると、夜が更けてから月が昇ります。亥中の月(いなかのつき)とも呼ばれますが、亥中とは午後10時頃を指します。
月齢22:下弦の月(かげんのつき)
陰暦22~23日頃の、月が欠けていく途中の半月をこう呼びます。上弦と同じく、英語ではhalf moonです。
弓の弦が下向きになるため、下の弓張という別名もあります。
また陰暦23日頃には月は午前0時近くに昇るため、「真夜中の月」と呼ばれることもあります。
この夜に月待ちをすることを「二十三夜待ち」と言い、古くはお経を唱えて月を拝み、悪霊を追い払うという行事でした。
この夜の月が神格化されたものを「二十三夜さま」、正しくは「二十三夜大月天子」と言います。この日の月待ちは願い事が叶うと言われ、信仰されてきました。
叶えたい願いがある人は、どうぞ試してみてください。また、二十三夜さまを祀ったお寺もあります。
月齢25:有明月(ありあけづき)・暁月(ぎょうげつ)
この時期の月は明け方に昇るため、こう呼ばれます。有明月は、本来は十六夜以降の月の総称のこと。
百人一首には、有明月を歌った有名な歌があります。
「今来むと 言ひしばかりに 長月(ながつき)の 有明(ありあけ)の月を 待ち出(い)でつるかな」
「今すぐに行きます」と言った人を、9月の夜長を寝ずに待ち続けていたら、ついに夜明けの有明の月が出てしまった……という意味です。
月齢29:三十日月(みそかづき)
新月間近の月。三十日を晦日と言いますが、晦日は「つごもり」とも読みます。
これは「つきごもり」が転じたもので、月が姿を見せないためにこう呼ばれました。
さて、こうして月を追い、朔から一周しました。夜空の月を見る時にちょっとだけ、今日の月は何という名前なのか、思い出して見ていただけると嬉しいです。