女教皇/女帝~タロットカード・大アルカナ解説

今回ご紹介する大アルカナは『女教皇』『女帝』という、2枚とも女性を描いたカードです。
前者は聖職に就いている女性の潔癖さや聡明さを、後者は女性の豊かさや母性的な部分を司ります。
2枚を合わせて見ることで、女性の持つシンボリックな意味合いや「女性性」を理解する助けになればと思います。

2『女教皇』 THE HIGH PRIESTESS

マルセイユ版では『女司祭』と書かれています。
カトリックの歴史の中では、女性が教皇になることはありませんでした。
唯一、伝説上の人物で、ジョアン(ヨハンナ)という女性がいます。信仰に篤いジョアンは男装して教会に入り、ついには教皇の地位に就いたのでした。
このカードは、そんな彼女をモデルにしているという説も存在します。
また、エジプトの女神イシスに通じるという見方もありますが、定かではありません。

『女教皇』のカードには、非常に神秘的なシンボルやモチーフが存在します。
「アルカナ」とは「秘密」「神秘」「秘儀」などを意味しますが、その最たるものとさえ言えそうです。

真ん中に座っている女性が女教皇ですが、彼女はヴェールをかぶり、ウェイト版では「トリプル・ゴッデス(三相女神)」と呼ばれる冠を身につけています。
トリプル・ゴッデスは、三相(上弦の月・満月・下弦の月)を意味し、女神の三つの姿である「うら若き少女」「成熟した母親」「老婆」を表現しています。
突き詰めれば、創造→維持→破壊といった万物の流れを示し、世界や宇宙の仕組みすべてを表現していると言ってもよいでしょう。

そして足元では、三日月を踏みしめています。この形は上弦の月で、上で述べた「うら若き少女」を意味しています。とはいえ月は、変化を表すもの。ずっとこの形のままではいないのです。

彼女は聖職に就いた身であり、胸の十字架がそれを示しています。霊的、精神的な存在であり、潔癖で純な性質の持ち主です。
手にした書物には「TORA」と書かれており、律法の書、学問の象徴を意味します。知恵の持ち主であり、学ぶことを欠かさないということですね。

また、彼女は黒と白の2本の柱の間に座っています。
これは旧約聖書にあるソロモンの神殿にあった柱で、黒のBは「ボアズ」(力)、白のJは「ヤキン」(確立)を示すと言われています。

柱の後ろには幕が張られ、ざくろの模様が描かれています。
ざくろは、女性の肉体の象徴でもあり、今は幕が引かれていますが、それが開かれた時には、彼女は少女から大人の女性へと変貌を遂げるのです。

キーワード

知性、直観、理解、清純、慎み、隠されたもの

総じて理知的な雰囲気のキーワードですが、それが永続するわけではありません。
真実はヴェールや幕の向こうに隠されて、現在はバランスが取れている、といったところでしょうか。
理知的なカード故に、恋愛を占ってこのカードが出た場合は、真面目すぎることを指摘されてしまうかもしれませんね。


正位置の意味

知性(をもって対処する)、理知的な判断
良識、インスピレーション
禁欲的
いずれ変化が起こる

逆位置の意味

無理解、わがまま(狭量)
思慮深さに欠ける、ヒステリック
冷たい、裏切り
神経質、潔癖過ぎる

3『女帝』 THE EMPRESS

『女教皇』が少女ならば、『女帝』は成熟した女性の魅力や資質をすべて備えた存在です。
その賢明さと学ぶ努力をもって様々な試練を乗り越え、あらゆる感情を味わった『女教皇』は、感性豊かな『女帝』へと変化します。
比較的現世的な要素を表しますが、スピリチュアルな事柄を実際にどう活かすか、という形での現実性と考えると良いかもしれません。

マルセイユ版では、王冠と玉座、黄金の錫、ワシの紋章の盾など、権力を分かりやすく表現しています。
おもしろいことに、玉座の形が、ちょうど女帝から翼が生えているように見え、このことから翼のある女神を『女帝』にあてたタロットも存在します。
有り余る権力を持ちながらも、霊的な部分を失っていないことは、その翼が証明しています。

ウェイト版の『女帝』は、自然の豊かな庭園で、柔らかなクッションのある椅子にゆったりと腰かけています。
服もゆるみのあるもので、ドレスのプリントはざくろの模様。しかも『女教皇』の背後の幕にあったざくろとは違い、皮に覆われてはいません。
彼女は妊娠しており、女性として完全に開花した状態です。

頭にかぶっているのは月桂樹の輪で、それには黄道十二宮を思わせる12の星の飾りがついています。
彼女が自然の世界の支配者で、勝利者である証拠でしょう。

そばに置いてあるハート型の盾には、占星術の金星のマークが記してあります。愛の形であるハートと、愛情を象徴する金星という二重の意味で、女帝は愛に溢れているのです。


キーワード

結実、繁栄、女性的豊かさ、愛情、母性、収穫、平和、いまだ生まれていない状態の何か

『女帝』は、女性のポジティブな魅力を表しています。
努力が実り形になって、今が盛りであり、それを収穫するタイミングです。
しかしこれが逆に出ると、本当の豊かさではなく表面だけの見栄やわがままにも傾きます。

正位置の意味

女性的な幸せ、結婚、妊娠
安らぎ、収穫が多い、感性豊か
家庭的、おしゃれ

逆位置の意味

虚栄心、過保護
うわべや物質欲に偏る、八方美人
嫉妬、心が満たされない

スプレッド紹介~シンプル・クロス・スプレッド(2枚引き)

大アルカナと一緒に、スプレッドも少しずつご紹介していきましょう。

これは鏡リュウジ著『タロット こころの図像学』の中で紹介されているものです。
以下、その書籍より引用します。

 このスプレッドは、アメリカのタロット占いしであるS・トムソン、R・ミュラー両博士が考案したものをもとにしている。最近の著書『タロットのハート』で紹介されていたものだが、この方法を知って以来、僕はほとんどの問題をこれで占っている。
 これは一言でいえば、「ケルト十字法」を限界にまでスリムダウンさせた方法だといえよう。非常にシンプルで、かつ、鋭い洞察を与えてくれるものなので、恋占いはもちろん、どんな問題でも的確に答えてくれるはずだ。とくに今の自分の状況や問題点をはっきりさせたいという人には、ぴったりの占い方法である。
 用いるカードはわずか二枚。「ケルト十字法」の最初の二枚を使う。
 1は現在の状況、2は問題の所在や希望の実現を阻んでいるもの、いわば試練を示している。この二枚の対比によって、さまざまなことをあぶりだしていこうとするのだ。

カードをシャッフルし(必要ならカットも)、これと思う2枚を引きます。
ケルト十字法では、上から7枚目ごとにカードを引くケースが多いですが、そのようにしてもよいでしょう。
自分で納得の行く引き方でかまいません。

引くカードが2枚ですから、大アルカナだけを用いるのもよいでしょう。
小アルカナを含むよりも、シンプルに答えが出てくるかと思います。

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