永遠の名曲――ラヴェル『ボレロ』の魅力

クラシックの曲の中では、五本の指に入るくらい有名なラヴェルの『ボレロ』。CMなどでもよく使用され、繰り返しの多い覚えやすいリズムとメロディが特徴で、様々なアレンジでも親しまれています。

もとより舞曲であるボレロですが、特にバレエにはいくつもの名振付があります。今日はいつまでも色あせない名曲『ボレロ』の魅力の秘密に迫ってみたいと思います。

ボレロってどんな曲?

ボレロの発祥と広がり

ボレロは18世紀末にスペインから始まった音楽であり、ダンスです。3拍子で、カスタネットやギターでリズムをつけたもので、ソロまたはペアで踊る曲でした。

後に2拍子になってキューバに広まり、メキシコからラテンアメリカへ。そしてアメリカ合衆国では、4拍子の曲として社交ダンスの種目となりました。ラテンダンスの中では、ゆっくりした踊りです。

舞曲としてのボレロ

19世紀には舞曲として、クラシックの作曲家がボレロを採り上げ曲を作りました。
1833年、ショパンが作曲したピアノ独奏曲のボレロは、序奏の後で3拍子のボレロのリズムが3部形式で描かれます。

しかし何と言っても有名なのが、ラヴェルが1928年に作曲したものでしょう。

ラヴェル『ボレロ』とは?

作曲の背景

バレリーナで役者のイダ・ルビンシュタインに依頼を受けたラヴェルは、最初は既存の曲の編曲を考えていましたが、その曲にもう編曲版があることを知り、自分で作曲することを決めたそうです。
これが『ボレロ』です。

1928年、7月から10月頃の約4か月で作曲され、同年11月にイダ・ルビンシュタインのバレエ団で初演されました。
そして独占権が無くなった1年後から、いろいろなオーケストラで演奏される人気曲となったのです。

1930年1月11日パリで、ラヴェル自らラムルー管弦楽団を指揮し、演奏会形式による初演を行っています。

ラヴェルの「ボレロ」はどんな楽曲?

ハ長調で、だいたい15分程度の曲です(ラヴェルが批評家にあてた手紙によると、彼自身は17分の演奏時間としています。今の平均より遅かったようです)。
演奏の間ずっと同じリズムが繰り返され、そのベースは小太鼓によって刻まれます。
そして、主なメロディはAとBの2パターンのみ。

冒頭、ささやくような小太鼓のリズムで始まり、弦楽器がピチカートでそこに音を加えます。
フルートがまず有名な旋律を奏で、次にクラリネットが同じAのメロディを、その後でファゴットがBのメロディを……と移り変わっていき、どんどん楽器が代わり、徐々にリズムを刻む楽器も増えていき、音に厚みが加わっていきます。

そして最後にオーケストラの総奏(トゥッティ)となって、ホ長調に転調し、堂々と締めくくられます。

バレエの『ボレロ』

ベジャール版『ボレロ』

元からバレエのために作られた曲ではありますが、今日最も知られているのはモーリス・ベジャール振付のものでしょう。
1981年に公開されたフランス映画『愛と哀しみのボレロ』で、ジョルジュ・ドンが、赤い円形の舞台の上で男性ダンサーに囲まれ、ソロを踊るシーンは有名で、圧巻の迫力です。

ベジャール版のボレロでは、真ん中のソロダンサーがメロディ、周囲のダンサーたちがリズムを表現しています。

またメロディを担当するソロダンサーは、モーリス・ベジャール・バレエ団が許可したダンサーでないと踊れない作品であり、今でも限られたダンサーだけがその大役を担っています。
バレエファンなら誰もが知っているシルヴィ・ギエムもそのひとりですが、彼女は2015年いっぱいで引退を表明しています。

プティ版『ボレロ』

ベジャールと並んで名高い振付家のローラン・プティは、男女2人のデュエットのもの、そしてソロダンサーのものと2作を作っています。

男女2人のものは、ボクシングの試合を観戦する喧噪の中、フード付きコートを脱ぐシーンから始まる珍しい演出。

また熊川哲也が1999年に世界初演したソロバージョンは、椅子にタバコなどといった、バレエの演出にしては奇抜な、しかしプティらしい小物を使うなど、工夫が凝らされたものとなっています。


このソロバージョンが、2014年大晦日の『東急ジルベスターコンサート』で、Kバレエカンパニーの宮尾俊太郎により再演されるとのこと。
ソロダンサーの技量が大いに問われる名作なので、期待したいですね。

フィギュアスケートの『ボレロ』

人気曲だけあって、ボレロはフィギュアスケートでもたくさん使用されています。

1984年、サラエボオリンピックで、アイスダンスでトーヴィル&ディーンペアが踊ったものが、当時非常に芸術性の高い振付で話題となりました。
審査員全員が、芸術展で満点をつけた奇跡の演技として伝説になっています。

また今期は、ロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワ選手がショートプログラムでボレロを選び、グランプリファイナルで優勝を果たしています。

新しい表現の『ボレロ』

今やオーケストラやバレエだけには留まらず、新しいスタイルの『ボレロ』も次々と生まれているようです。

まずはホルンの名手、ラデク・バボラークによる『ボレロ』。
チェコ出身の彼は、現在世界で高い評価を得ているホルン奏者です。
多彩なレパートリーを持つバボラークが、15人のアンサンブルをバックに演奏するボレロは、ホルンという楽器の表現を超えるほどの名演で、魅力に溢れています。

そして日本が誇る女性バレリーナ吉田都と日舞の男性舞踊家36名によるボレロが、2014年12月13日に東京文化会館で披露され、異色のコラボレーションとして大きな話題を呼びました。

名曲は色あせず、これからもいろいろな展開が見られることでしょう。楽しみにしたいと思います。

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