第九を聴こう!――年の瀬に響く『歓喜の歌』の調べ

毎年12月後半になると、ひんぱんに聞こえてくるあのメロディ、あの合唱。
そう、ベートーヴェンの交響曲第9番、通称『第九』です。

特に第4楽章の歓喜の歌は有名ですね。

第九は、どうして年末の風物詩になったのでしょうか。
そして第九をナマで体験してみたい方のために、クラシック演奏会に必要な知識もお伝えできればと思います。

『第九』が生まれた経緯

2014年の改正で、シングルとペアでも歌詞のある曲の使用が解禁になったフィギュアスケート。
そのフリープログラムで、町田樹選手が『第九』を使用し、堂々の演技が評判を呼んでいます。

町田選手が「120%を出さないと形にすらならない」と言ったほどの大曲、それがベートーヴェン最後の交響曲、第九なのです。

ベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調作品125の初演は1824年。
ロンドンのフィルハーモニック・ソサエティから新しい交響曲の作曲依頼を受けて制作されたこの曲は、それまでの交響曲の枠を大きく超えたものでした。

演奏時間は70分前後で、ベートーヴェンの交響曲の中では最長。
その長さもさることながら、オーケストラで使われる楽器の編成も当時としては最大級。
さらに最終楽章ではソプラノ、アルト、テノール、バリトンの4人の声楽ソリストに加えて四部合唱も加わるとなると、そのスケールの大きさは一目瞭然ですね。

ベートーヴェンはボンに暮らした学生の頃から、第4楽章の声楽部分で使われているシラーの詩『歓喜に寄す』に曲をつけたいと思っていたようです。
そしてそれは、彼の音楽の集大成ともいえる第九で実現したわけです。

『第九』が年末に演奏される理由は?

おもしろいことに、第九が年末に多く演奏されるのは日本だけで、ほかの国にはそういった例はありません。

日本で第九の演奏回数が増えたのは、各地のオーケストラが戦後の財政難だった頃の苦肉の策に端を発するものです。
つまり、合唱がつくおかげで、合唱団員の友だちや親族がチケットを買ってくれる。
これによって、オーケストラの経営が安定するのです。

ではなぜ年末かというと、日本交響楽団(現在のN響ことNHK交響楽団)が1947年の12月に3夜も第九の演奏会を開いて、それがとても集客がよかったのが始まりのようです。
この成功を知ったほかのオーケストラがこぞって年末に第九を演奏し始め、さらに地方公演も増えていき、「年末に第九を聴こう」「年末に自分たちで第九を歌おう」という意識が高まっていきました。

私は第九の演奏会に行った経験があるのですが、客席でも合唱部分を口ずさむ人が多いように感じました。
そのくらいメロディが覚えやすく、またあの明るく力強い雰囲気に参加したい気持ちになるのでしょうね。
合唱団に入っている方ならなおさらです。各地で第九を歌おう、という動きに賛同する人たちが大勢いたのも納得できます。

シラーの詩『歓喜に寄す』は人類愛、世界平和、そして希望を綴ったもの。
去る年の最後を飾るにもふさわしく、また新たな年を迎えるためにもうってつけといえるでしょう。

ちなみに、昔は第4楽章の合唱が理解されず、3楽章までで演奏を終えることも多かったそうです。
一説には、第3楽章の緩徐楽章(かんじょがくしょう。ゆっくりとしたテンポの楽章のこと)が、ベートーヴェンの交響曲9曲の中でも最高の精神的な高みに達したという評価も高く、それに対して第4楽章があまりにも世俗的だという理由もあったとか。

合唱部分がとりわけ有名になった現在とはまったく違う解釈をしていた時代もあるのですね。

『第九』を実際の演奏会で楽しもう!

今年はぜひ、第九を生演奏で楽しんでみませんか?
人気のある演目ですが、演奏会の数も多いので、手に入れるチャンスもたくさんあると思います。

チケットの入手手段はいろいろあります。
各種オンラインチケットサービスが手軽かと思いますが、また演奏会場でも扱っています。
近いホールでは売り切れでも、この時期は街のライトアップも華やかです。ちょっと足を伸ばして離れた会場を選んで、行き帰りの美しい光の街を眺める……そんな楽しみ方もいいですね。

多くの演奏会の中でも人気がある第九の演奏会は『1万人の第九』。
文字通り、1万人がオーケストラやソリストと一緒に合唱を歌い上げる演奏会です。

こちらは6月頃から合唱団を募集し、12月の本番に向けてレッスンから始めるもの。
チケットは売り切れてもテレビの放映もあるので、そちらで予行演習をして来年の合唱募集やチケット販売に備えるのもいいかもしれませんね。

【チケットストリート】

クラシック演奏会のマナーあれこれ

クラシックと聞くとどうしても堅苦しいイメージがあって、演奏会に行くにも緊張してしまう……そう考える人も多いかもしれません。

ですが、日本のクラシックコンサートは想像するよりも気軽なものです。
服装もばらばらで、オペラでもない限りは特別なドレスアップは必要ありませんし、オペラであっても日本だとそこまでのフォーマルは求められないものです。

普通のクラシックの演奏会ならば、おつとめ帰りの方はそのままで充分です。
気楽な気持ちで会場に行ってみてください。

ただ幾つか、気をつけなくてはいけないことはあります。

クラシックはほとんどマイクを使わず生の音を楽しむものです。
会場も曲が始まればしんと静まりかえります。携帯電話の電源やアラームを切ることは最低限のマナーといえるでしょう。

また、会場は乾燥するためにのど飴を持参する人も多く、冬には必須アイテムといえますが、飴の包みをがさがさ開ける音は思いのほか響き渡ります。
開けるタイミングはきちんと見計らいたいものです。

とはいえ、基本的に、他人に迷惑をかけないように心がければ、問題はありません。
会場にいる全員が心地よく音楽を楽しむためにも、気遣いは忘れないようにしたいですね。

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