バレエを観に行こう――王子を待つ姫君『眠れる森の美女』

呪いによって長い眠りについた姫が王子の愛で目を覚ます物語、『眠れる森の美女』。原作の童話はもとより、チャイコフスキー三大バレエの一つとして有名かつ親しまれている作品です。

三大バレエの中でももっともボリュームがあり、華やかな踊りとバラエティに富んだ音楽、そして豪華できらびやかな舞台は一見の価値あり。
そのあらすじや見所などをご紹介します。

『眠れる森の美女』そのあらすじと成り立ち

バレエ『眠れる森の美女』がロシアで初演されたのは1890年。1888年に依頼を受けたチャイコフスキーは、その台本に感動して作品に取り組んだといわれます。
振付は、クラシックバレエの基礎を築いたマリウス・プティパ。現在踊られているものも、ほとんどがプティパの振付を元にしています。

英語では『Sleeping Beauty』、『眠る美女』と呼ばれ、またロシア語の原題も同じ意味を持ちます。日本では、『眠れる森の美女』や『眠りの森の美女』と訳されることが多いようです。

バレエ版の『眠れる森の美女』の物語はペローの童話をベースに、ほかのいくつかの童話から話を取り入れて書かれています。

『眠れる森の美女』のあらすじ

プロローグ
バレエの始まりはフロレスタン14世に娘オーロラが誕生し、それを祝う式典の場面から。
6人の妖精たちが呼ばれて、それぞれ姫に祝福をし、正直さや優雅さなどのよい性質を与えます。

そこへ邪悪な妖精カラボスが登場。式典に呼ばれなかった怒りで、姫に呪いをかけます。
『オーロラ姫は16歳の誕生日に、指を刺して死ぬだろう』
狼狽する王と王妃ですが、リラの精が姫は指を刺しても死ぬことはなく100年の長い眠りにつき、その後王子様がやってきて、彼のキスで目を覚ますでしょう、とその呪いを緩めてくれます。

第1幕
オーロラはすくすく成長し16歳になり、その誕生日の祝宴が開かれます。
4人の求婚者からバラを贈られた後に、マントで顔を隠した人物から紡錘(つむ、スピンドル。先のとがった糸を紡ぐ道具)を贈られたオーロラは、喜んで踊るうちに指を刺してしまいます。

紡錘の贈り主はもちろん、邪悪な妖精カラボス。オーロラ姫が倒れて周囲が騒然とする中、リラの精が登場し、オーロラは眠りについているだけだと改めて説明します。そして城にいた全員に眠りの魔法をかけ、城はいばらに覆われます。

第2幕
それから100年が経過。
お供をつれて狩りに来ていたデジレ王子(フロリマンド王子、フロリムント王子とも)。王子がひとりになったところにリラの精が現れ、オーロラ姫の幻影を見せます。
その美しさに虜になった王子は、リラの精に頼みオーロラ姫の眠る城へと向かいます。

途中現れたカラボスを打ち負かし、王子はオーロラ姫の元へ。口づけとともに姫は目を覚まし、いばらに覆われていた城と、その住人もまた息を吹き返しました。

第3幕
そしてオーロラ姫と王子の結婚の日。
金銀宝石の精やおとぎ話の主人公たちが、お祝いの踊りを披露します。
オーロラ姫と王子の晴れやかな結婚の踊りをクライマックスに、王子と姫は王冠とマントを贈られ、堂々たる姿を見せて舞台は幕を閉じます。

『眠れる森の美女』バレエの見所

バレエとして最も有名なのは、『ローズ・アダージオ』と呼ばれる、オーロラが4人の求婚者と踊る場面でしょう。
バレリーナが4人の男性ダンサーと次々にペアを組み長いバランスのシーンを見せたり、版によっては4人に高く抱え上げられるなど、とても見せ場の多い踊りです。

またこのバレエでは妖精やおとぎ話の主人公など、ファンタジックな登場人物がそれぞれに個性的な衣装と振付で踊ります。
たとえばカナリヤの精、激しさの精。そして長靴をはいた猫、赤ずきんと狼、シンデレラ姫とフォーチュン王子、青い鳥とフロリナ姫など。
どれもその役柄にあった振付で、わかりやすく楽しめます。

クラシック音楽として最も知られているのは、第1幕で村人たちが踊るワルツでしょう。
「ガーランドワルツ」とも呼ばれる賑々しい祝宴の音楽で、心地良いメロディが特徴です。

物語の中で悪役として登場するカラボスですが、男性ダンサーが老女に扮して踊ることも多くあります。
『シンデレラ』の継母などでもそうですが、悪役に男性ダンサーをあてて少しコミカルに演じることで、全体の楽しい祝宴的な雰囲気を崩さず、見ている側も安心して楽しめるエンターテイメントに仕上げてあるケースが多いですね。

映画『マレフィセント』と『眠れる森の美女』

『眠れる森の美女』の主役はオーロラ姫ですが、ディズニー映画『マレフィセント』では、姫ではなく呪いをかけた妖精側にスポットが当たっています。

2014年の夏に公開されたこの作品は、過去のディズニーアニメ『眠れる森の美女』をリメイク、実写化したもの。

主役・マレフィセントを演じたのはアンジェリーナ・ジョリー。
悪役であるはずのマレフィセントに秘められた本当の気持ち、そこにある深いテーマや真実を見事に表現しています。

マレフィセントがなぜオーロラ姫に呪いをかけたのか。それはバレエの筋立てとは違い、人間界と妖精界の歴史やマレフィセント自身の過去にありました。

映画とバレエ、両方楽しむことで、また見方が広がるかもしれませんね。

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